映画のジャンルとは
映画のジャンルとは、映画を、物語の要素や作品から受ける印象などの共通点にもとづいて分類するためのカテゴリーです。ストーリー、あらすじ、登場人物、設定といった、物語の構成要素を総合的に判断して決定します。
映画のジャンルには、主観的なものと客観的なものが存在します。
主観的なジャンルは、観客の意見、解釈、視点、感情、価値判断などに左右されるカテゴリーで、映画のジャンルの多くは主観的なものです。
一方、客観的なジャンルとは、上映時間など個人的な見解の相違にほとんど左右されない基準のカテゴリーです。
映画のジャンルは主観的なものが多いため、厳密な定義は存在しません。
この記事では、インターネット・ムービー・データベースで使われているジャンルをもとに、日本で見られる全ての映画のジャンルの意味を解説します。
インターネット・ムービー・データベースで使われているジャンルで映画に該当するのは、以下の24種類。
アクション、アドベンチャー(冒険)、アニメーション、SF、音楽、コメディ、サスペンス(スリラー)、スポーツ、成人、西部劇、戦争、短編、伝記、ドキュメンタリー、ドラマ(ヒューマン、ヒューマンドラマ)、犯罪(クライム)、ファミリー、ファンタジー、フィルム・ノワール、ホラー、ミステリー、ミュージカル、歴史、ロマンスの24種類です。
それでは映画のジャンルを、アイウェア順に見ていきましょう。それぞれのジャンルの特徴と主観的か客観的かの区別を簡単に説明し、最後に代表的な作品をあげています。
アクション
派手で破壊的なアクションを数多く含む映画:主観的
アクションは派手で、通常は破壊的なアクションのシーンを数多く含む映画。
このジャンルを特徴づける要素は、ノンストップアクション、高度なスタント、追跡劇、戦闘や爆発、自然災害などです。
日本の時代劇や香港のカンフー映画もこのジャンルに分類されることがあります。
DCコミックスやマーベル・シネマティック・ユニバースのスーパーヒーローの映画も「アクション」映画と言えます。
「アクション」映画の代表的な作品は『ダイ・ハード』(1988年)、『アベンジャーズ』 (2012年)、『ジョン・ウィック』(2014年)、「ワイルド・スピード」シリーズ(2001年~)です。
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』予告編
あわせて読みたい
アドベンチャー(冒険)
危険やエキサイティングな経験に次々と遭遇する映画:主観的
アドベンチャーは1つの決まった目標を目指す登場人物が、数多くの危険やエキサイティングな経験に次々と遭遇する映画。
よくある物語の要素としては、主人公が失われた大陸やエキゾチックな土地を探検して、宝探し(トレジャーハント)や探索の旅(クエスト)を行う、といったことがあげられます。
「アクション」の要素を含む作品も多いです。
「アドベンチャー」映画の代表的な作品は『グーニーズ』(1985年)、『ロード・オブ・ザ・リング/ 王の帰還』 (2003年)、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)です。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』予告編
アニメーション
上映時間の4分の3以上がアニメーションである映画:客観的
手書き、コンピュータ、ストップモーションなど、いかなる手法でもアニメーションを使ったシーンが全体の4分の3以上を占める映画。
人形劇でもストップモーションを使ったシーンが大半の場合はアニメーションに分類されます。
「アニメーション」の代表的作品は、『アナと雪の女王』(2013年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)、『ライオン・キング』(1994年)です。
『千と千尋の神隠し』予告編
あわせて読みたい
SF
科学的空想にもとづいた映画:主観的
SFは科学にもとづいた空想、環境変化、宇宙旅行、他の惑星への旅行といったシーンが多数含まれるか、舞台設定の全体的バックグラウンドをなす映画。
物語によく登場する要素としては、地球以外の惑星の住民やその文明、ロボット、サイボーグ、恒星間航行やタイムスリップがあげられます。
特に「スター・ウォーズ」シリーズのような、大掛かりな宇宙戦争やドラマチックな冒険を描写した作品は「スペースオペラ」と呼ばれます。
暗く抑圧的な社会とそれに反抗する人びとがプロットの中心になる「サイバーパンク」も、SFの重要なサブジャンルの1つです。
「SF」映画の代表的な作品は、『スター・ウォーズ』 (1977年)、『マトリックス』 (1999年)、『エイリアン』 (1979年)です。
『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』予告編
音楽
音楽を多く含んだ映画:主観的
音楽映画とは、ミュージカルほどではないですが、音楽に関連する要素を数多く含んでいる映画。コンサートや、実在のまたは架空のバンドの映画などがこのジャンルに該当します。
1人の音楽家の人生に焦点がおかれている場合は、「伝記」映画です。
「音楽」映画の代表的な作品は、『アリー/ スター誕生』(2018年)、『あの頃ペニー・レインと』(2000)、『セッション』(2014年)、『ピッチ・パーフェクト』(2012年)です。
『アリー/ スター誕生』予告編
コメディ
ユーモラスでコミカルなシーンが大半を占める映画:主観的
「コメディ」とは登場人物がほとんどのシーンでユーモラスまたはコミカルな状況に置かれる映画。
ストーリーの要素やユーモアの要素によって数多くのサブジャンルが存在します。
子どもを含めた家族みんなで安心して楽しめる作品は、「ホームコメディ」、恋するカップルが主人公の作品は「ラブコメディ」と呼ばれます。
一方、「ブラックコメディ」は、人間の死や犯罪といった暗くてタブーのテーマでもユーモラスに風刺した作品です。
「コメディ」映画の代表的な作品は、『お熱いのがお好き』(1959年)、『ハリーとサリー』(1989年)、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)です。
『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』予告編
サスペンス(スリラー)
観客の気持ちをあおりたて、緊張させる映画:主観的
「サスペンス映画」とは人の気持ちをあおりたてたり、緊張させるシーンが連続する物語の映画です。「スリラー」と同じ意味で使われることが多いです。
このジャンルは、「ミステリー」や「ホラー」と重なる要素を多く含んでおり、「ミステリー・サスペンス」のように使われます。
「サスペンス」映画の代表的な作品は、『ブラック・スワン』(2010年)、『羊たちの沈黙』(1991年)、『セブン』(1995年)です。
『ブラック・スワン』予告編
あわせて読みたい
スポーツ
スポーツまたはスポーツイベントに焦点を置いた映画:客観的
「スポーツ映画」とは、スポーツまたはスポーツイベントに焦点を置いた映画。架空のスポーツと実在するスポーツの両方を含みます。
「スポーツ」映画の代表的な作品は、『ルディ/涙のウイニング・ラン』 (1993年)、『しあわせの隠れ場所』(2009年)、『ロッキー』(1976年)です。
『しあわせの隠れ場所』予告編
成人
18歳以下禁止の映画:主観的
「成人映画」性や暴力の描写を基準に、日本では映倫が18歳以下の青少年の鑑賞を規制するべきであると判断した映画です。
西部劇
アメリカ西部の開拓生活を描いた映画:客観的
「西部劇」とは、17世紀から20世紀までの、アメリカ西部の開拓生活の描写がシーンが作品の大部分を占める映画。
「西部劇」の代表的な作品は、『許されざる者』(1992年)、『続・夕陽のガンマン』(1966年)、『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015年) です。
『レヴェナント: 蘇えりし者』予告編
戦争
実際の戦争を題材にした映画:客観的
「戦争映画」とは、過去または現在の実際の戦争に関連するシーンが物語の大勢を占める映画。
題材になる戦争は、20世紀以降の戦争が大半ですが、アメリカ南北戦争を扱った作品も戦争映画に分類される場合があります。
第2次世界大戦を一兵卒として戦い、『最前線物語』などの戦争映画が有名なサミュエル・フラー監督は、「戦争映画の1つの目的は、個人的であろうと感情的であろうと、観る者に戦争を実感させることである」と述べています。
「戦争」映画の代表的な作品は、『1917 命をかけた伝令』(2019年)、『プライベート・ライアン』(1998年)、『プラトゥーン』(1986年)です。
『1917 命をかけた伝令』予告編
あわせて読みたい
短編
上映時間45分未満の映画:客観的
「短編映画」とは、劇場用またはビデオ映画で、上映時間が45分に満たない作品です。
「短編」映画の代表的な作品は、『ヘアー・ラブ』(2019年)、『キットブル』(2019年)、『明日の世界』(2015年)です。
『キットブル』
伝記
実在の人物の人生を描いた映画:客観的
「伝記映画」とは、実在の人物の人生の描写に焦点が置かれている映画。全生涯を描いた作品でも、一時期に重点を置いた映画でも、どちらもこのジャンルに含まれます。
歴史的事実に対して大幅に劇的演出を加えた映画から、脚色を最低限に抑えたドキュメンタリー風の作品まで、創作の度合いはさまざまです。
作品の焦点が人物ではなく、出来事におかれている場合は、「歴史映画」のジャンルに分類されます。
「伝記」映画の代表的な作品は、『ジュディ 虹の彼方に』(2019年)、『不屈の男 アンブロークン』(2014年)、『エリン・ブロコビッチ』(2000年)です。
『ジュディ 虹の彼方に』予告編
ドキュメンタリー
現実をありのままに記録した映画:客観的
「ドキュメンタリー映画」とは、現実をありのままに記録した映像に手を加えないで編集したシーンが大半を占めている映画です。
登場人物は、俳優によって再現されたものではないことが重要です。
このジャンルにはコンサートなどの舞台のパフォーマンスの様子を記録した映画も含まれます。
「ドキュメンタリー」映画の代表的な作品は、『アメリカン・ファクトリー』(2019年)、『皇帝ペンギン』(2005年)、『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010年)です。
ドラマ(ヒューマン、ヒューマンドラマ)
人間の葛藤や感情をシリアスに描写した映画:主観的
「ドラマ」は、日本では「ヒューマンドラマ」とも呼ばれるジャンルです。おもに登場人物の人間関係や心の葛藤に焦点が置かれ、ユーモラスというよりはシリアスなトーンが作品の大半を占めます。
「ドラマ」映画の代表的な作品は、『ショーシャンクの空に』(1994年)、『ギルバート・グレイプ』(1993年)、『カサブランカ』(1942年)です。
ヒューマンのジャンルは?
「ヒューマン」は、映画のジャンルとしては「ドラマ」と同じ意味で、人間味、人間らしさを主題として描いた映画です。
日本ではドラマ映画を「ヒューマンドラマ」と呼ぶことが多いです。このためドラマ映画を指して「ヒューマン」とも言うようになりました。
『ショーシャンクの空に』予告編
あわせて読みたい
犯罪(クライム)
登場人物が犯罪に巻き込まれる映画:主観的
「犯罪(クライム)映画」とは登場人物が犯罪に参加したり、手を貸したり、そそのかしたり、計画したりすることに巻き込まれていく映画です。
主人公が犯罪を実行する側でなくても、犯罪の描写がストーリーの大半を占める場合にはこのジャンルに分類されます。
「犯罪(クライム)」映画の代表的な作品は、『パルプ・フィクション』(1994年)、『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)、『ファーゴ』(1996年)です。
『パルプ・フィクション』予告編
あわせて読みたい
ファミリー
家族みんなで安心して楽しめる映画:客観的
「ファミリー映画」とは、子どもや家族全体で、娯楽や教育のために鑑賞するのにふさわしいと一般的に認められた映画です。「子ども映画」よりも広い範囲の観客をターゲットにしています。
名作アニメもこのジャンルに分類される作品が多いです。
「ファミリー」映画の代表的な作品は、『ファインディング・ニモ』(2003年)、『オズの魔法使い』(1939年)、『メリー・ポピンズ』(1964年)です。
『ファインディング・ニモ』予告編
ファンタジー
魔法や神秘にもとづいたストーリーの映画:主観的
「ファンタジー」とは登場人物が魔法や神秘的な出来事に終始関与する物語の映画です。よく描写される要素は、魔法、超自然的現象、神話、伝承、異世界などです。
「ファンタジー」は魔法や神秘にもとづいているため、科学にもとづいた作品である「SF」とは、通常は区別されます。
「ダークファンタジー」は、重苦しい設定や暗い物語、残酷なシーンなどを特徴とする、大人向けファンタジーのサブジャンルです
「ファンタジー」映画の代表的な作品は、「ハリー・ポッター」シリーズ(2001〜2011年)、『パンズ・ラビリンス』(2006年)、『魔法にかけられて』(2007年)です。
『ハリー・ポッターと賢者の石』予告編
フィルム・ノワール
アメリカの大都市を舞台にした暗い雰囲気の映画:客観的
厳密な意味での「フィルム・ノワール」とは、1927年の『暗黒街』に始まり、1958年の『黒い罠』に終わるとされる、一連のハリウッド製の陰鬱な映画のジャンルです。
特徴としては、暗くふさぎ込んだ登場人物、汚職、刑事や探偵、大都市の陰鬱な側面といったことがあげられます。おおむね白黒映画で、時代設定は、作品の製作時期と同年代です。
このような雰囲気を共有する新しい映画は、「ネオノワール」と呼ばれます。
「フィルム・ノワール」の代表的な作品は、『マルタの鷹』(1941年)、『深夜の告白』(1944年)、『三つ数えろ』(1946年)です。
『マルタの鷹』予告編
ホラー
恐怖や不快を感じさせる映画:主観的
「ホラー映画」とは、ストーリー全体で登場人物が次々と恐ろしく不快な経験をするシーンが多数含まれる映画です。よくある要素は、幽霊、宇宙人、吸血鬼、狼男、悪魔、拷問、モンスター、ゾンビ、精神病者、連続殺人犯などです。
「サスペンス」以上に恐怖や嫌悪感に重点が置かれていることが特徴です。
ホラーというジャンルにも、多数のサブジャンルが存在します。
「サイコホラー」は心理的恐怖に重点を置いたホラーです。
一方、血みどろで残酷な描写の多いホラーは、「スプラッター」と呼ばれます。
悪魔・「反キリスト」や、それを信仰する人たちが主題の作品は「オカルトホラー」とも呼ばれ、1970年代に流行しました。
「ホラー」映画の代表的作品は『シャイニング』(1980年)、『ハロウィーン』(1978年)、『クワイエット・プレイス』(2018年)です。
『クワイエット・プレイス』予告編
Amazonプライム30日間無料体験で今すぐ観る
ミステリー
登場人物が謎に巻き込まれたり、謎解きに挑戦する映画:主観的
「ミステリー映画」とは、登場人物が謎に巻き込まれたり、謎解きに挑んだりすることがプロットの中心となる映画です。「犯罪(クライム)」に関連することが非常に多いです。
また「サスペンス」とも親近性のあるジャンルと言えます。
「ミステリー」映画の代表的な作品は、『ガール・オン・ザ・トレイン』(2016年)、『ゴーン・ガール』(2014年)、『ウィンターズ・ボーン』(2010年)です。
『ガール・オン・ザ・トレイン』予告編
ミュージカル
セリフ、歌、音楽、ダンスが融合した映画:客観的
「ミュージカル」はセリフ、歌、音楽、ダンスが有機的に一体となってストーリーが展開される映画です。セリフから自然に歌や音楽、ダンスへと移行していくことがポイントです。
ディズニーなどのアニメーションでも「ミュージカル」に分類されるものがあります。
なおポップコンサートやクラシックのオペラは、「音楽」に分類されます。
「ミュージカル」映画の代表的な作品は、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)、『ラ・ラ・ランド』(2016年)、『グレイテスト・ショーマン』(2017年)です。
『ラ・ラ・ランド』予告編
歴史
歴史的出来事に焦点を置いた映画:客観的
「歴史映画」とは、歴史的に重要な意味をもつ実際の出来事に焦点を置いた映画です。「歴史的に重要な出来事」とは、現代であれば新聞やテレビのニュースにおいて、1週間連続でトップに取り上げられるような事件です。昔のことであれば歴史の教科書に書かれているような事柄です。
歴史の穴を埋めるために、登場人物、細かい出来事、セリフにフィクションが加わることは多くあります。
一方、実在の人物を完全に架空のストーリーに利用した場合には、「歴史」映画とは呼びません。
さらに焦点が、主要登場人物の人生におかれている場合は、「伝記」に分類します。
「歴史」映画の代表的な作品は、『リンカーン』(2012年)、『ドリーム』(2016年) 、『英国王のスピーチ』(2010年)です。
『英国王のスピーチ』予告編
ロマンス
登場人物間の感情的結びつきに焦点を置いた映画:主観的
「ロマンス映画」とは、登場人物の、他の登場人物との感情的な結びつきに焦点を置いた映画です。「ラブロマンス」とも呼ばれます。特に純粋で献身的な関係を描くことが多いです。
全編にわたって愛情関係がプロットの中心を占めていることが特徴です。
近年は、同性愛を取り上げたロマンスもメインストリームの映画で見られようになりました。
「ロマンス」映画の代表的な作品は、『きみに読む物語』(2004年)、『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(2013年)、『ブロークバック・マウンテン』(2005年)です。
『きみに読む物語』予告編
ジャンルを理解して、好みの映画を見つけよう!
映画のジャンルの意味を理解していると、自分の好みの映画の傾向を知ったり、作品紹介を読んで自分の好きな映画を探しやすくなります。このサイトや、他の映画関連の記事を読むときに、ぜひこの解説を参考にしてください。
最後に、映画のジャンル分けで注意するべきことを1つあげておきます。
最初に述べましたように、映画のジャンルは主観的なものが多く、厳密な定義は存在しません。
さらに、観客を退屈させないように映画は複数のジャンルの要素を組み合わせて製作されています。
このため、ジャンルの固定観念にとらわれないことが映画を楽しむコツの1つと言えます。