映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじをネタバレ解説!キャストや監督も紹介

2021年9月23日木曜日

サスペンス 歴史

t f B! P L
映画『クーリエ:最高機密の運び屋』
この記事では映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじをネタバレ解説、あわせてキャストや監督も紹介します。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』の基本情報

『クーリエ:最高機密の運び屋』は実話にもとづいたスパイ・サスペンス映画。1960年代初頭、米ソの軍拡競争で緊張が高まるなか、核戦争を回避するため命がけでソ連の最高機密を盗んで西側に運んだ男たちの友情の物語です。

  • 原題:The Courier(初公開時のタイトルはIronbark)
  • 監督:ドミニク・クック
  • 脚本:トム・オコナー
  • キャスト:ベネディクト・カンバーバッチ、メラーブ・ニニッゼ、レイチェル・ブロズナハン
  • 公開年:2020年1月24日、サンダンス映画祭にてプレミア上映
  • 上映時間:1時間52分
  • 製作国:イギリス

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』予告編

動画を再生するには2回クリックしてください。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ:第1幕

ロシアのスパイがCIA、MI6と接触

1960年、アメリカとソ連(現在のロシア)の間で核兵器の軍拡競争が激化、両国は人類を全滅させるほどの核兵器を所有していました。

にもかかわらず米ソの首脳はお互いを威嚇してエスカレート、多くのひとは世界が破滅の危機に直面していると不安になっています。

1960年8月12日、モスクワにおけるフルシチョフ書記長の演説。熱狂する聴衆を前に「我が国の核兵器は日々強化されている。我々はアメリカを葬り去る」と叫ぶフルシチョフの言葉に、冷たく拍手する男がいました。

この男はソ連参謀本部情報総局(GRU)で軍隊の最高機密情報も知っているオレグ・ペンコフスキー。彼はある夜アメリカ人の若者に秘密の手紙をアメリカ大使館に届けることを頼みます。

“アイアンバーク(ペンコフスキー)”と接触せよ

4カ月後、ロンドンのMI6(英国軍事情報部6部)本部でCIAのエミリー・ドノヴァンがMI6のディッキー・フランクスたちと会見します。

ドノヴァンは「アイアンバーク」というコードネームがつけられたペンコフスキーのファイルを開きました。

ペンコフスキーは表向き科学研究国家委員会で働いていますが、実はソ連の最高機密を握る軍隊の諜報機関GRUのエージェント。彼こそがアメリカにコンタクトを求めてきた人物だったのです。

CIAは1959年にアメリカのスパイであったポポフ大佐が露見して処刑されてから、モスクワでの活動を縮小しています。このためCIAはMI6にペンコフスキーと接触するよう助力を求めてきました。

さらにドノヴァンはペンコフスキーが大物なのでMI6のエージェントと直接接触すると目立つから、素人を使うよう提案します。

その任務に選ばれたのが技術関連のビジネスマンであるグレヴィル・ウィンです。彼は東ヨーロッパと取引があったため、ペンコフスキーに近づくのにうってつけでした。単調な毎日に退屈していたウィンは、あまり深く考えずこの任務を引き受けます。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ:第2幕

ウィン、ペンコフスキーとのコンタクトに成功

ウィンはモスクワでソ連に西側の技術を売り込むセールスマンとして近づきます。ウィンと2人きりで食事をして、ボリショイ劇場でバレー『シンデレラ』を鑑賞したペンコフスキーは「アマチュア」であるウィンを信用しました。

ペンコフスキーのGRUでの任務は西側の技術を盗むことであるため、彼はウィンに自分をソ連の通商団のひとりとしてイギリスに招待するよう指示して別れます。やがてペンコフスキーはソ連の通商団を率いてロンドンにやってきました。

ロンドンのホテルでペンコフスキーはドノヴァンやフランクスたちと密かに会見。彼はいつでも西側に亡命できることを条件にソ連の最高機密情報を西側に渡すことを約束します。

ペンコフスキーは、自分が渡す情報を交渉の武器としてではなく世界に平和をもたらす道具として使ってほしいと頼み、情報の運び屋にウィンを指名してきました。

ペンコフスキーの熱意に打たれて運び屋となるウィン

ウィンは妻子持ちなので危険なことはこれ以上したくないと断ります。しかし、ドノヴァンは核戦争が始まったらウィンの家族は全員死の灰を浴びることになると言って彼を脅します。

それでも決心のつかないウィンでしたが、ペンコフスキーがロシアのウォッカを持ってロンドンの彼の自宅を訪問します。

家族と食事をしてペンコフスキーをホテルに送る道すがら、彼から「あなたしかできない」と言われたウィンはその熱意に胸を打たれて、最高機密の運び屋の仕事を引き受けることにします。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ:第3幕

スパイの掟

素人のウィンはプロのスパイであるペンコフスキーからスパイの「掟(おきて:tradecraft)」を伝授されることに……。

ペンコフスキーはソ連の情報機関を納得させるため、ウィンを西側から技術を盗む産業スパイの情報源のひとりであることにしました。ウィンは西側の入手し難い技術情報をモスクワでペンコフスキーに渡します。

ウィンはソ連の最高機密をペンコフスキーから受け取ってイギリスに持ち帰り、その情報を西側の情報機関が片っ端から分析するのです。

家族に打ち明けることのできないストレス

こうして、ウィンはペンコフスキーと接触するため、たびたびソ連を訪れるようになります。一方、東西の緊張もベルリンの壁の建築などで高まっていきます。

いつも生命の危険にさらされているウィンはストレスが溜まり、突然妻を熱烈に愛したり、子どもの何気ないことに声を荒げたりするようになります。

ウィンは過去に浮気をしたことがあったので、妻であるシーラは不安になっていますが、ウィンは彼女に真相を打ち明けることはできません。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ:第4幕

ウィンとペンコフスキーに疑いが!?

ある日、MI6内部でソ連の情報機関に内通している男がペンコフスキーのもたらした情報を発見して、ソ連の最高機密を流出している人物がいることを疑い始めました。

その頃、ペンコフスキーはフルシチョフがアメリカを脅すためキューバに核ミサイルを配備することを決めたことを知り、その情報を西側に流します。

モスクワのペンコフスキーはKGBのエージェントの訪問を受けてウィンとの関係について訊かれますが、ウィンは商売のことしか頭にないと言ってごまかします。

CIAはペンコフスキーから入手した書類とU-2偵察機の航空写真を照らし合わせることで、キューバにソ連の核ミサイルが配備されたか確認する計画です。

ウィンとペンコフスキーが疑われ始めたことに危険を感じたMI6とCIAは彼らのスパイ活動を中止することにします。モスクワのペンコフスキーは心労で倒れてしまいますが、数日入院しただけで命に別状はありませんでした。

キューバ危機の背後でペンコフスキーの亡命を画策

アメリカ政府は航空写真でキューバに核ミサイルが配備されたことを確認、ソ連にミサイルを撤収することを公式に要求します。

米ソ核戦争の危機が高まるなか、ペンコフスキーのイギリス訪問はキャンセルされました。ペンコフスキーの身に危険がせまったことを知ったウィンは彼をソ連から救い出すため、もう一回ソ連を訪れることを志願します。

CIAのドノヴァンも外交官に扮してモスクワのアメリカ大使館に到着。ペンコフスキー一家の亡命の準備が整いソ連を出国する前の晩、ウィンとペンコフスキーはバレー『白鳥の湖』を鑑賞しながら涙するのでした。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ:第5幕

亡命直前に逮捕されるウィンとペンコフスキー

しかし、彼らを捕らえる網はすでに張り巡らされていたのです。1962年10月28日、まずドノヴァンがアメリカ大使館を出たところで逮捕され、24時間以内にソ連から退去するよう命令されます。

ペンコフスキーはウィンを空港に送ってから家族を連れて亡命するため自宅に戻ったところを家族の目前で逮捕。

最後にウィンも飛行機が離陸する直前に逮捕され、ソ連の恐ろしい監獄に送られました。

イギリスに戻ったCIAのドノヴァンはロンドンのウィン宅を訪問、ウィンの妻に真相をすべて打ち明けます。ドノヴァンはウィンの身柄引き渡しがスムーズに進められるため、家族や友人、報道機関には一切真相を明かしてはならないと言います。

ウィンとペンコフスキー最後の対面

ソ連の劣悪な環境の監獄で繰り返し取り調べを受けるウィンの健康状態は日々悪化していきました。半年後、ソ連の監獄でウィンに面会した彼の妻は、変わり果てた彼の姿に愕然とします。

ウィンが監獄で死ぬかもしれないと恐れたドノヴァンは、スパイ交換でウィンを救出するよう求めました。

ある日、ウィンはソ連の監獄でペンコフスキーと対面尋問を受けることになりました。対話はすべて録音されているため、自分たちに不利になることはしゃべれません。

しかし、ペンコフスキーの手を握ったウィンは勇気をふるって、ペンコフスキーの情報のおかげでソ連は核ミサイルを撤収し、核戦争が回避されたことを彼に伝えました。

1964年4月22日、ウィンはソ連のスパイ・コノン・モロドゥイ(別名ゴードン・ロンスデイル)と交換で釈放されました。

ウィンとペンコフスキーのその後

ウィンはビジネスの世界に戻り、1990年に平和な生涯を終えます。

ペンコフスキーは処刑されて無名墓地に葬られましたが、彼の妻子はモスクワでひっそりと暮らし続けました。

ウィンとペンコフスキーは5000点以上の最高軍事機密書類を密かに運びました。ペンコフスキーは西側が雇った最も重要なソ連の情報源であると見なされています。

キューバ危機からほどなくしてホワイトハウスとクレムリンの間にホットラインが設置されます。その後、世界が核戦争で破滅する危機に瀕することはなくなりました。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』の登場人物・キャスト

ここからは映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のメイン・キャストをご紹介します。見出しは「役の名前:俳優の名前」の順番です。

グレヴィル・ウィン:ベネディクト・カンバーバッチ

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』の主人公・グレヴィル・ウィンはイギリスの実在した電気技師・ビジネスマンです。

ウィン役を演じるベネディクト・カンバーバッチは1976年生まれ、イギリス・ロンドン出身の俳優です。

イートン校とならぶ超名門パブリックスクール・ハロウスクール在学中から演劇活動にいそしんだカンバーバッチ。MCUのドクター・ストレンジ役などあらゆるジャンルの映画で幅広く活躍する彼は今やイギリスを代表する俳優のひとりです。

カンバーバッチは『クーリエ:最高機密の運び屋』のような歴史映画にも積極的に出演しています。

第2次世界大戦中にドイツ軍の暗号を解読した実在の天才数学者を演じた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014年)ではアカデミー主演男優賞にノミネートされました。

ベネディクト・カンバーバッチの人生の詳しい解説は、次の動画がおすすめです!

オレグ・ペンコフスキー:メラーブ・ニニッゼ

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』

オレグ・ペンコフスキーも実在したソ連の軍人・スパイです。オレグという名前は英語では語呂が悪いので、「アレックス」と呼んでくれと言っています。

ペンコフスキー役を務めたメラーブ・ニニッゼは1965年生まれ、旧ソ連グルジア(現ジョージア)の首都・トビリシ出身の俳優です。

舞台監督を祖父に持つニニッゼは舞台俳優の教育を受け、1984年にテンギズ・アブラゼ監督作品『懺悔』で映画デビューを果たしました。

ニニッゼはジョージアばかりでなくイギリス、ロシア、ドイツ、フランスなど様々な国の映画に出演しています。

ナチスの迫害から逃れてアフリカに以上したユダヤ人一家の姿を描くドラマ映画『名もなきアフリカの地で』(2001年)のヴァルター・レドリッヒ役が特に高く評価されています。

エミリー・ドノヴァン(偽名・ヘレン):レイチェル・ブロズナハン

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』

エミリー・ドノヴァンはペンコフスキーとウィンの担当になるCIAのエージェント。ウィンの前ではヘレンという偽名を使っています。

エミリー・ドノヴァンは複数の実在の人物をモデルに創作された架空の人物です。モスクワのイギリス大使館のヴィザ係の妻でペンコフスキーと連絡を取っていたジェネット・チザムがモデルのひとりであるとクック監督は語っています。

ドノヴァン役を演じるレイチェル・ブロズナハンは1990年生まれ、アメリカ出身の女優です。

ブロズナハンの当たり役と言えば、アマゾン・プライムのオリジナルTVシリーズ『マーベラス・ミセス・メイゼル』(2017〜21年)の主人公・ミリアム・“ミッジ”・メイゼル役!

『マーベラス・ミセス・メイゼル』は1950年代末から1960年代初頭のニューヨークを舞台に、スタンドアップ・コメディの才能が開花した専業主婦のドタバタを描くコメディです。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』も1960年代初頭と時代が同じで、ブロズナハンの得意とする時代ですね。

シーラ・ウィン:ジェシー・バックリー

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』

シーラはグレヴィル・ウィンの妻で、彼との間に10代の男の子がいます。

シーラ役を演じるジェシー・バックリーは1989年生まれ、アイルランド出身の女優です。

バックリーは2008年、ロンドン・ウェスト・エンドの『オリバー!』リバイバル上演の出演者を決めるオーディション番組で2位に輝き、芸能界デビューを果たしました。その後はロンドンなどの舞台で活躍しています。

2016年、テレビミニシリーズ『戦争と平和』のマリア・ボルコンスカヤ役で注目を集めたバックリー。同シリーズの監督トム・ハーパーがメガホンを握った映画『ワイルド・ローズ』(2018年)の主人公役の演技が高く評価され、英国アカデミー賞などに輝いています。

2020年にNetflixで配信されたサスペンス映画『もう終わりにしよう』では、ジェシー・プレモンスの相手役で主演を務めました。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のスタッフ

監督:ドミニク・クック

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』の監督を務めたドミニック・クックは1966年生まれ、イギリス・ロンドン出身の舞台・映画監督です。

10代から演劇ファンであったクックは大学卒業後すぐに演劇畑を歩み始め、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで助監督になりました。1995年からロイヤル・コート・シアターの運営に関わり、2007年から2013年まで同シアターの芸術監督を務めています。

映像作品の監督としてはテレビの監督を経て2017年シアーシャ・ローナン主演『追想』(2017年)で長編映画監督デビューを果たしました。

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』はクックの長編映画2作目となります。

脚本:トム・オコナー

映画『クーリエ:最高機密の運び屋』の脚本を担当したトム・オコナーは「ヒットマンズ・ボディーガード」シリーズの脚本で知られる脚本家です。

彼のデビュー作『ファイヤー・ウィズ・ファイヤー炎の誓い』(2012年)もアクション・サスペンス。効果的に緊張を高めていく彼のストーリー展開で映画『クーリエ:最高機密の運び屋』もテンポの良いサスペンスに仕上がっています。

2人の男の固い友情が胸を打つ映画『クーリエ:最高機密の運び屋』

この記事では映画『クーリエ:最高機密の運び屋』のあらすじ、キャストなどをネタバレも含めてくわしく、わかりやすく紹介しました。

実話にもとづいた映画『クーリエ:最高機密の運び屋』は、007シリーズのような派手さはありませんが、手に汗握る本格派スパイサスペンスです。性格や境遇のまったく違う2人の男たちの間に、共通の任務を通じて次第に固い友情の絆が育まれていく過程が胸を打ちます。

終盤、バレーを見ながらこれまでのことを無言で回想する2人の男たちの姿はまさに感動的です。

あわせて読みたい

9月23日に公開された映画『クーリエ:最高機密の運び屋』は実話にもとづいたスパイ・サスペンスだ。

QooQ