映画『ラストナイト・イン・ソーホー』について解説!あらすじ、監督、キャストやを紹介

2021年8月13日金曜日

サスペンス ホラー

t f B! P L
『ラストナイト・イン・ソーホー』ポスター
この記事では『ラストナイト・イン・ソーホー』の監督、キャスト、あらすじや見どころについて解説します。『ラストナイト・イン・ソーホー』はファッションデザイナーを目指す少女が1960年代のロンドンにタイムスリップするサイコホラーです。

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の作品情報

『ラストナイト・イン・ソーホー』はトーマシン・マッケンジー演じる少女が1960年代のロンドン・ソーホー地区にタイムスリップするサイコホラー。『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)などコメディ映画で有名なエドガー・ライトが初めてホラー映画に挑む作品です。

トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイという若手女優がW主演を務めることでも注目を集めています。

  • 原題:Last Night in Soho
  • 監督・脚本:エドガー・ライト
  • キャスト:トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ
  • 公開年:2021年9月4日、ベネチア国際映画祭でプレミア上映
  • 上映時間:1時間56分
  • 製作国:イギリス

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』予告編

ビデオを再生するには2回クリックしてください。

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の監督・脚本

監督:エドガー・ライト

Embed from Getty Images

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の監督を務めるエドガー・ライトは1974年生まれ、イギリス出身の映画監督、脚本家、プロデューサーです。

コメディを得意にするライト監督の代表作と言えば、異なるジャンルの映画をコメディにした「スリー・フレーバー・コルネット3部作」です。

1作目『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)はゾンビ、2作目『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007年)はアクション、3作目『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013年)はSFを題材にしたコメディでした。

ライトは脚本家としてMCUの『アントマン』(2015年)の脚本も共同執筆しています。

2017年に公開された本格的なアクション映画『ベイビー・ドライバー』ではオープニングのカーチェイスシーンから音楽とアクションが見事に連動した軽快な演出を見せています。

『ラストナイト・イン・ソーホー』はサイコホラーという彼にとってはまったく新しい分野への挑戦となり、彼がどのような新機軸を打ち出してくるか、とても楽しみです。

脚本:エドガー・ライト、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の脚本は、ライト監督がクリスティ・ウィルソン=ケアンズと共同で作成しました。

クリスティ・ウィルソン=ケアンズは1987年生まれ、スコットランド出身の脚本家です。彼女はサム・メンデス監督の戦争映画『1917 命をかけた伝令』(2019年)の脚本をメンデスと共同執筆したことで注目を集めました。

2021年4月に撮影が始まった犯罪サスペンス映画『The Good Nurse(原題)』では初めて単独で脚本を担当。さらにタイカ・ワイティティが監督を務めるスター・ウォーズ新作映画でワイティティ監督と共同で脚本を執筆しています。

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』のキャスト

ここでは映画『ラストナイト・イン・ソーホー』のメイン・キャストをご紹介します。見出しは「役の名前:俳優の名前」の順番です。

エロイーズ・“エリー”・ターナー:トーマシン・マッケンジー

Embed from Getty Images

この映画の主人公である少女・エロイーズ・“エリー”・ターナー役を演じるトーマシン・マッケンジーは2000年生まれ、ニュージーランド出身の女優です。映画監督の父親と女優の母親という映画一家に生まれたマッケンジーは2014年からテレビドラマなどに出演し始めます。

2018年にヒューマンドラマ『足音はかき消して』におけるPTSDに苦しむ退役軍人の娘役でブレイク。2019年にはタイカ・ワイティティ監督の戦争映画『ジョジョ・ラビット』では、主人公・ジョジョの家に匿われるユダヤ人少女・エルサ役を務めて注目を集めました。

2021年に公開されたM.ナイト・シャマラン監督のホラー映画『オールド』では、数時間で11歳から16歳に成長してしまった女の子を演じています。映画『オールド』の詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

この記事では映画『オールド』のあらすじ、キャストや原作との違いをネタバレも含めて解説・考察します。『オールド』は2021年に公開されたM.・ナイト・シャマラン監督のサスペンス映画。人間の老化が加速する謎の海岸に閉じ込められた家族の恐怖を描く物語です。

経験したことのない恐怖に耐えるしっかりした少女の役を演じることが多いマッケンジーですが、今回のエロイーズはどのようなキャラクターになるか期待が高まります。

サンディ:アニャ・テイラー=ジョイ

Embed from Getty Images

エロイーズがタイムスリップした1960年代のロンドンで活躍する歌手・サンディ役を演じるのは、抜群のスタイルと高い演技力で大人気のアニャ・テイラー=ジョイです。

1996年にアメリカ・フロリダ州マイアミで生まれた彼女は、6歳のときにロンドンに移り住み同地で教育を受けています。16歳のときにいじめが原因で学校を中退、17歳のときにロンドンのデパート・ハロッズの外でスカウトされてモデル活動を始めました。

彼女は事実上の映画デビュー作『ウィッチ』(2015年)や『スプリット』(2016年)といったホラーやサイコサスペンス映画で集中力の高い素晴らしい演技を披露しています。『ラストナイト・イン・ソーホー』でも謎めいたキャラクターを演じきってくれると思います。

ジャック:マット・スミス

ジャックはサンディのマネージャでボーイフレンドです。

銀色の髪の紳士:テレンス・スタンプ

テレンス・スタンプが演じる銀色の髪の紳士は、何故かエロイーズに普通以上の関心を持っています。

ジョン:マイケル・アジャオ

ジョンはエロイーズのクラスメートで友人です。ジョンはエリーに好意を抱いています。

ミズ・コリンズ:ダイアナ・リッグ

ミズ・コリンズはエロイーズのアパートの大家さんです。

ミス・コリンズ役を務めるダイアナ・リッグは2020年に亡くなる前にこの役の撮影を済ませており、この映画は遺作となります。

マーガレット・“ペギー”・ターナー:リタ・トゥシンハム

マーガレット・“ペギー”・ターナーはエロイーズの祖母です。

その他の登場人物

ここからは『ラストナイト・イン・ソーホー』のその他の登場人物を簡単に紹介します。各項目は「役の名前(俳優の名前):キャラクターの簡単な説明」の順番です。

  • ララ(ジェシー・メイ・リー):エリーのクラスメート
  • ジョーカスタ(シノバ・カールセン):エリーのクラスメートで学生寮のルームメイト
  • 女性バーテンダー(マーガレット・ノーラン):マーガレット・ノーランも2020年に亡くなっており、ダイアナ・リッグと同じくこの映画が遺作となりました。
  • 女性刑事(リサ・マグリルス)
  • チャールズとベン(ジェームズ・フェルプス、オリバー・フェルプス)

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』前半のあらすじ【ネタバレなし】

エロイーズ・“エリー”・ターナーは、母親が10年以上前に自殺してからコーンウォールの祖母のもとで大きくなりました。エリーは1960年代のスウィンギング・ロンドンの文化を崇拝し、部屋にはツイッギーやオードリー・ヘプバーンのポスターを飾っています。彼女のお気に入りの音楽はシラ・ブラックやピーター&ゴードンです。

エリーはときどき亡くなった母親の幻影を見ることがあります。そんな彼女の夢はモードデザイナーになることです。

ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに入学したエリーは、学校の女子寮に入ります。しかし、入寮したその日から、ルームメイトやその仲間たちに、自作の服や田舎出身を馬鹿にされて居心地が悪くなりました。

そこでエリーは、下宿人募集のチラシで見た、憧れのロンドン中心部フィッツロビア地区に引っ越します。彼女の大家さんであるミズ・コリンズは、夜8時以降に男性を連れ込むことを固く禁止するなど厳格ながら親切なところもある女性です。

昔風の家具・インテリアの部屋で、お気に入りのシラ・ブラックのレコードをかけながらエリーが夜眠りにつくと、彼女は夢のなかで1960年代のロンドンにタイムトラベルします。夢のなかでエリーは同じ年頃のサンディという歌手と融合します。

サンディはナイトクラブに自分を売り込みに行くと、女性のまとめ役のジャックといい仲になりました。エリーはサンディと融合することで、1960年代の華やかな生活を楽しみます。

この夢の体験はエリーのデザインのインスピレーションともなって、エリーはサンディの髪型やファッションを真似するようになりました。特にサンディの服を参考にしたデザインは学校で高い評価を受けます。

しかし彼女の夢のスウィンギング・ロンドンの世界はどこかおかしいところがあります。しかも彼女の夢は現実の世界にも影響を与え始めました。

たとえばエリーがバイトをしているソーホーのパブ「トゥカン」の常連客である銀色の髪の老紳士は、サンディの真似をして髪をブロンドに染めたエリーがサンディに似ていると指摘します。

一方、エリーの夢の中では、歌手として雇われたはずのサンディがナイトクラブでストリップダンサーとして働かされ、ジャックから客の男たちの相手をするように命じられるようになりました。

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』後半のあらすじ【ネタバレ注意】

サンディのクラスメートのジョンは彼女に興味を持っており、ついにエリーをパーティーに誘いました。しかし、パーティーの会場で何とも不気味な出来事が起こります。エリーは眠っていないにもかかわらず、踊り続けるサンディを見て、男たちの幽霊に追いかけられるという幻覚に見舞われたのです。

エリーはパーティー会場から逃げ出し、心配して追いかけてきたジョンは、彼女の部屋に行くことに決めます。しかし、部屋に入るとエリーは恐ろしい幻覚を見ます。ジャックがサンディにナイフを突き立てて殺してしまう光景です。エリーはパニックに陥り、部屋に現れたミズ・コリンズにジョンは追い払われました。

エリーは自分の幻覚が現実であることを信じ、警察に事件を報告しに行きますが、誰も彼女の話を信じません。

エリーは銀色の髪の老紳士がジャックであると疑い始めます。彼女はジョンに協力を求め、事件の真相を追求しようとしますが、その道のりは容易ではありません。

エリーは最終的に銀色の髪の老紳士と対決することを決意します。彼女は老人に質問を浴びせましたが、彼は無言で店を去り、外に出たとき通りかかった車に轢かれてしまいます。そこで、エリーは初めて銀色の髪の老紳士がジャックではなく、元刑事でサンディを助けようとしていたことを知りました。

エリーは怖れを感じ、ソーホーから去ることを決意します。彼女はミズ・コリンズに会い、部屋を出る意向を伝えようとしますが、そこで衝撃的な事実が明らかになります。ミズ・コリンズは、自分がサンディであり、この家で男たちを殺していたことを告白します。

エリーが見た夢は、サンディ=ミズ・コリンズがこの部屋で体験した過去の現実だったのです!

ミズ・コリンズがエリーのお茶に薬を盛ったため、彼女は倒れてしまいます。そのとき、エリーを心配してやってきたジョンがミズ・コリンズにナイフで刺され、その争いで家が家事になります。ミズ・コリンズはエリーとジョンに逃げるよう促し、自らは家の中で炎に包まれました。

物語は、エリーがソーホーに留まりファッションデザイナーへの道を歩み続ける姿で終わります。自信を取り戻した彼女は、鏡の中で母親とサンディが笑顔で微笑む姿を見つけ、この奇怪な出来事の結末に別れを告げるのでした。

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の見どころ

映画の舞台となる1960年代ロンドンのソーホー地区とは

『ラストナイト・イン・ソーホー』の舞台は、タイトルにあるロンドンのソーホー地区です。ライト監督はこの地区に25年間暮らしていたことから、並々ならぬ思い入れがあります。

同監督はインタビューで、「自分が住んでいる現代のロンドンだけでなく、60年代のロンドンにも魅力を感じています」と語っていました。

ロンドンのソーホー地区は、1980年代以降ファッション街に変貌する以前はパブや映画館ばかりでなく性風俗店も軒を並べる歓楽街として知られていました。

映画ではソーホーの映画館やダンスホールが写し出され、当時の混沌とした雰囲気を醸し出しています。

サイコホラーの名作から影響を受けている

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』は当時のファッションや音楽ばかりでなく、当時のドラマやサイコホラーの名作からもインスピレーションを受けています。

象徴的でスタイリッシュな映像で心理的恐怖を煽る演出は、アルフレッド・ヒッチコック、デヴィッド・リンチ、ダリオ・アルジェントの名作を想起させるものです。

特に予告編にも見られるネオンライトが眩しい幻想的な映像はダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』(1977年)を想い出させます。

『ファイト・クラブ』のようなプロット?!【ネタバレ注意】

『ラストナイト・イン・ソーホー』の前半では、夢のなかでエロイーズが鏡を見ると、鏡に写っているのはサンディ。夢のなかでエリーはサンディとなっているように見える演出です。

この点がデヴィッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』(1999年)のプロットに似ていると指摘されています。『ファイト・クラブ』は主人公・「僕」(エドワード・ノートン)とタイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)とが同一人物であった、というどんでん返しの結末でした。

『ラストナイト・イン・ソーホー』ではエリー=サンディという可能性は最初から暗示されています。しかし、エリー=サンディ=ミズ・コリンズというどんでん返しの仕掛けになっていました。

2人の若手女優の化学反応に注目!

この記事では映画『ラストナイト・イン・ソーホー』の監督、あらすじ、キャストや見どころについて解説しました。

ライト監督が愛する1960年代のロンドン・ソーホー地区の混沌とした雰囲気。そこでトーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイという2人の個性的な若手女優が見せる、絶妙の化学反応も大きな見どころとなっています。

結末を知っていても、もう一回観たくなる作品です。

QooQ