MCUドラマ『ロキ』に登場するシルヴィを考察
MCUドラマ『ロキ』第2話の結末で、TVAに協力してロキが追跡している変異体は女性版ロキであることが明らかにされました。彼女は第3話で名前をシルヴィと名乗ります。
マーベル・コミックではロキが女性の姿で登場することは珍しくないため、女性版ロキの登場はファンの間ではある程度予想されていました。
この記事では、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に登場したばかりの新たなキャラクターであるシルヴィについて、コミックとの違いや演じる女優などについて解説します。
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マーベル・コミックのレディ・ロキ
ロキはもともと変身能力を持っているので、短い間だけ女性の姿に代わることはコミックで頻繁に起こります。
しかし、マーベル・コミックでロキが長い間女性になっていた期間も何回かありました。
たとえば2007年以降の『Thor(原題)』では、ラグナロク(神々の黄昏)のあとロキはレディ・シフのために用意された身体に生まれ変わっています。ロキはレディ・シフをホスピスケアを受けている老女の形に閉じ込めて、彼女の身体を自分のものにしようとしていたのです。
2008年に展開されたクロスオーバーイベント『Secret Invasion(原題)』でもレディ・ロキが登場します。
女性版ロキの登場は予告されていた?
女性版ロキがドラマ『ロキ』に登場する可能性は、実はドラマの配信が始まるかなり前から予想されていました。
まず、ロキのような衣装をまとった女性の姿がリークされています。
予告編ではロキがブラック・ウィドウに似た女性とともに写っている場面があり、ファンのなかにはレディ・ロキではないかと指摘する人もいました。
またマーベルがツイッターで公開したTVAの書類でもロキの性別は「fluid(流動的、不定)」となっています。ドラマ『ロキ』のヘッド・ライターであるマイケル・ウォルドロンもロキの性別は物語の重要な要素であることを確認していました。
MCUのレディ・ロキとコミックの違い
シルヴィは第2話の終わりで登場したばかりで、その正体は謎に包まれていますが、コミックのレディ・ロキとの違いはすでに明らかです。
コミックでレディ・ロキは本物のロキの生まれ変わりですが、シルヴィは別のタイムラインから来た独立したキャラクターのようです。第1話で言及されたマルチバース戦争と彼女は何か関わりがあるのか、シリーズの続きで明らかにされていくでしょう。
外見では、コミックのレディ・ロキは男性版ロキと同じ黒髪ですがドラマのシルヴィは金髪であるという違いが目立ちます。レディ・ロキのフィギュアも黒髪です。
さらにロキが自分の分身と対決するというストーリーも、これまでのコミックではあまり見られなかった展開です。
トム・ヒドルストンの演じる男性のロキにとっても、新たなアイデンティティの危機の段階に突入したことになります。彼は自分の能力を上回る分身と戦わなければならないばかりでなく、性別のアイデンティティも根底から揺るがされることになるわけです。
マーベル・コミックのシルヴィ/エンチャントレス
コミックでシルヴィという名前のキャラクターでロキと関係があるのは、2009年に『Dark Reign: Young Avengers』#1で初登場するシルヴィ・ラシュトンです。
コミックのシルヴィは、ロキによって魔力を与えられ、自分のことをアスガルドのエンチャントレスであると思い込んでいる人間の女性です。ロキは何も知らない彼女をアベンジャーズに潜入させて、アベンジャーズを監視する道具にする計画でした。
オリジナルのエンチャントレスは、マーベル・コミックに1960年代から登場するアスガルドの魔法使いで、ソーの宿敵です。
一方、シルヴィ・ラシュトンはオクラホマに住む普通の若い女性でしたが、ある朝起きたら突然魔法が使えるようになっていました。そこで彼女はヒーローチーム「アベンジャーズ」に加えられることを願って、ニューヨークにやって来ます。
しかし、彼女がロキによってアベンジャーズに潜入するために送られてきた人物であるとわかり、彼女はアベンジャーズから追い出されます。
このことで深く傷ついたシルヴィ。ですが、アベンジャーズに拒否された理由がロキの危険から遠ざけることであったことを知った彼女は、正義の味方になる希望は捨てません。
マーベル・コミックのシルヴィは、オリジナルのエンチャントレスと同じ豊かな金髪と強力な魔力を持っています。しかし性格的には、上に述べたようにロキに作られながらもヒーローになることを欲する、オリジナルのエンチャントレスよりも屈折したキャラクターです。
本当の自分は何者なのか、アイデンティティーの危機という点で、ドラマ『ロキ』の主要テーマと共通する悩みを抱えていると言えます。
ドラマ『ロキ』のシルヴィとコミックの比較
まず、本当のロキとの関係ですが、ドラマ『ロキ』のシルヴィは、ロキの変異体と言われていますが、ロキの名前で呼ばれることを嫌がっています。
ロキとの関係は複雑なようで、コミックのシルヴィとある程度似ているかもしれません。
次に、シルヴィの来歴ですが、ドラマの第3話で彼女は、母親のことはあまり知らず、魔術はほとんど独学であることをロキに打ち明けていました。
このような来歴は、コミックではシルヴィよりもオリジナルのエンチャントレスに近いです。
外見では、コミックのシルヴィはオリジナルのエンチャントレスと同じく豊かな金髪。ドラマのシルヴィは短い髪ですが金髪に染めています。
ドラマ『ロキ』でシルヴィを演じる女優・声優は
ソフィア・ディ・マルティノー
シルヴィ役を演じるソフィア・ディ・マルティノーは1983年生まれ、イタリア系イギリス人の女優です。
イギリス中心部の都市・ノッティンガムで生まれたディ・マルティノーは、舞台芸術関連の高校を卒業後サルフォード大学に進学、同大学を優秀な成績で卒業しました。
ディ・マルティノーは2004年から主にイギリスのテレビドラマに出演しています。特に医療ドラマ『The Royal Today』や『Casualty』にはレギュラー出演を果たしています。今回のシルヴィ役は、彼女が国際的にブレイクする大きなチャンスとなるのではないでしょうか。
ちなみに彼女は『ロキ』の撮影開始時は、4カ月前に第1子を出産したばかりだったそうです!
私生活の面で彼女は俳優のウィル・シャープと交際しています。1986年に東京で生まれたウィル・シャープの本名はウィリアム・トモノリ・フクダ・シャープと言います。彼はケンブリッジ大学を卒業後、ローヤル・シェークスピア・カンパニーを経て、ドラマ『Casualty』でディ・マルティノーと共演しました。さらにシャープはダーク・コメディ・ドラマ『Flowers』の原案、監督及び主演を務めたことでも知られています。
シルヴィの声優は佐古真弓
シルヴィの声を演じるのはスカーレット・ヨハンソンやジェシカ・チャステインの担当声優として知られる佐古真弓です。『ゼロ・ダーク・サーティ』や『女神の見えざる手』では男社会で戦う女性を演じたチャステインの声を演じています。
MCUでは『アイアン2』(2010年)でブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフの声を担当していました。この役の声は『アベンジャーズ』(2012年)からは米倉涼子に替わりました。
まとめ
この記事ではドラマ『ロキ』第2話でMCUに初登場したキャラクターであるシルヴィについて、コミックと比較して解説/考察しました。
ドラマのシルヴィはコミックと違って、ロキの独立した変異体として登場します。来歴の一部はオリジナルのエンチャントレス、複雑な事情はシルヴィ・ラシュトン、外見はレディ・ロキを取り入れたキャラクターと言えるでしょう。
コミックではさまざまな姿に変わるロキ。ドラマ『ロキ』でもこれから新たなロキの変異体が登場する可能性も捨てきれず、続きが楽しみですね。