ミュンヘン市の禁酒令とは
『南ドイツ新聞』の報道によりますと、ミュンヘン市が導入を検討している禁酒令とは、公開の場における飲酒の制限を目的としたもので、飲酒や酒類の所持を一般的に禁止するものではありません。1週間の住民10万人あたり感染者数が35人を超えた場合に禁酒令を発令。広場などの公共の場における午後11時からの飲酒と、路上における午後9時からの酒類販売を禁止することが検討されているそうです。
飲酒についての厳密な定義や(口の開いたビール瓶を持っていただけで捕まる?!)、誰が取り締まり、どのような罰則があるのか、といった具体的なことは依然検討中と言われています。
ちなみに1週間の10万人あたり感染者数35人というのは、後述のようにバイエルン州において公共の生活に制限を導入するときの目安に使われている数字です。
今回の措置についてミュンヘンのディーター・ライター市長(ドイツ社民党 SPD)は、「簡単な決断ではありません」と語っています。さらに同市長は、「新型コロナウイルスの流行にあたって、住民の安全を守り、より実質的な負担の大きい措置をできるかぎり回避することが何よりも重要です」と、今回の禁酒令導入の根拠をあげました。
なお今回の禁酒令は一度発令されると、1週間の10万人あたり感染者数が一定期間35人を下回るまで、解除されません。
「1週間の住民10万人あたり感染者数(die Sieben-Tage-Inzidenz)」とは
ドイツでは新型コロナウイルス感染者数の推移の指標に「1週間の住民10万人あたり感染者数(die Sieben-Tage-Inzidenz)」を用いています。これは過去7日間の住民10万人あたりの新規感染者数を示す数字です。5月にドイツで制限措置の緩和がはじまったとき、ドイツ連邦政府は1週間の10万人あたり感染者数50人を目安に設定しました。つまり、過去7日間の10万人あたりの新規感染者数が50人を超えた場合、密閉された室内における集会などの自由が再び制限される可能性があるということです。
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ドイツの他の州と比較して厳しい措置をとってきたバイエルン州では、過去7日間の10万人あたりの新規感染者数が35人を超えると警戒態勢をとるようにしています。
ミュンヘン市が禁酒令を検討している理由
ミュンヘン市が禁酒令を検討している背景には、8月半ばから同市で感染者数が急増していることがあげられます。ミュンヘンにおける1週間の10万人あたり感染者数は、8月5日はまだ6.39でしたが、8月中旬から増加を続け、22/23日には30人を突破しました。ちなみにバイエルン州全体では、現在約15人にとどまっています。このような感染者数の急速な増加は、このところ好天続きで公園や広場に人が集まったことが大きな要因であると、市当局は判断したようです。
ミュンヘン市長が禁酒令を出す法律的根拠は?
今回のミュンヘン市の禁酒令は、市議会の議決を必要としない、市長が制定できる「規則」で、その法的根拠は、損害を避けるために制限や禁止、罰則を定めることを認めた「感染症予防法(Infektionsschutzgesetz / IfSG)」にあります。このため今回の措置は議会の議決を必要としない行政行為とされていますが、ミュンヘン市では民主的正当化のために来週にも州議会の休暇委員会でこの問題を議論する予定です。
禁酒令の取り締まりはどのように行われる?
午後9時から店舗外で酒類を販売することを取り締まるのは、食品に関する法規や飲食店における感染症予防法の取り締まりを担当する区の保健所です。違反した際の罰金徴収も地方自治体が行います。最終的に禁酒令を遂行するのは警察ですが、警察の具体的な取り締まりの方法はまだ決まっていないそうです。ミュンヘンの警察は、犯罪の解決や危険の予防を優先し、自治体の命令の取り締まりは緊急を要する任務ではないと考えているそうです。
ロックダウンのときのベルリンの警察と同じように、しばらくは指導の範囲にとどまり、いきなり罰金や逮捕という事例は少ないであろうと思われます。