インサートの主な効果
映画の編集において、インサートとは、物語の進行に直接関係のない映像を、他の映像の間に挿入する手法です。具体的には新聞の見出し、時計の針、食べ物、武器などが、物語の展開に必要な情報を視聴者にわかりやすく表示するために使用されます。
インサートの主な効果は、次の3つです。
- 場面転換を自然に見せる
- 補足説明効果
- 時間の経過演出
場面転換を自然に見せる
映画の編集では、通常、映像と音声を同時に切り替えるカット編集が一般的です。しかし、カット編集を連続して行うと、視聴者に違和感を与える場合があります。そこで、場面転換を自然に見せる効果として、インサートカットが使用されるのです。
例えば、主人公が歩いているシーンから、別の場所に移動したシーンに切り替わる場合、単にカット編集を行うと、視聴者に「主人公がどうやって移動したのか?」と疑問を抱かせてしまう可能性があります。
そこで、主人公が歩いている足元をインサートカットで挿入することで、視聴者に「主人公が歩いて移動した」という情報を視覚的に伝えることができます。
補足説明効果
インサートカットは、物語の進行に必要な情報を視聴者にわかりやすく伝えるためにも使用されます。
例えば、主人公が何かを調べているシーンで、その調査結果をインサートカットで挿入することで、視聴者に調査結果を理解してもらうことが可能です。
また、インサートカットは、登場人物の心理を暗示するためにも使用されます。
例えば、主人公が不安を感じているシーンで、時計の針をインサートカットで挿入することで、視聴者に主人公の不安を暗示することが可能です。
時間の経過演出
インサートカットは、時間の経過を演出するためにも使用されます。
例えば、主人公が仕事に向かうシーンで、時計の針をインサートカットで挿入することで、視聴者に「主人公が仕事に向かうまでに、それなりの時間がかかった」という情報を視覚的に伝えることが可能です。
また、インサートカットは、物語の流れを中断することなく、別の時間軸を描写するためにも使用されます。例えば、現在進行中のシーンから、過去のシーンに切り替わる場合、単にカット編集を行うと、視聴者に違和感を与える場合があります。
そこで、過去のシーンに関連するインサートカットを挿入することで、物語の流れを中断することなく、別の時間軸を描写することが可能です。
コンティニュイティ編集との関係
コンティニュイティ編集とインサートカットは、映画の編集において、両輪のような関係にある手法と言えます。
コンティニュイティ編集は、映画やテレビ番組が、実際には異なる時間や異なる場所で撮影されたショットで構成されているにもかかわらず、1つの連続した流れを写しているかのように感じさせる手法です。
一方、インサートカットは、物語の進行に直接関係のない映像を、他の映像の間に挿入する手法です。
コンティニュイティ編集は、物語の流れをスムーズにするために、映像の視覚的な連続性を重視します。一方、インサートカットは、物語の情報を補足するために、映像の意味的な連続性を重視します。
両者は、どちらか一方が優れているという訳ではなく、どちらも映画の編集において重要な役割を果たします。
前にあげた例では、主人公が歩いているシーンから、別の場所に移動したシーンに切り替わる場合、インサートカットで主人公の足元を挿入することで、視聴者に「主人公が歩いて移動した」という情報を視覚的に伝えることができました。
この例でインサートカットは、コンティニュイティ編集によって確立された視覚的な連続性を維持しながら、物語の情報を補足する役割を果たしています。
同じように、主人公が何かを調べているシーンで、その調査結果をインサートカットで挿入する場合、インサートカットは、物語の進行に必要な情報を視聴者にわかりやすく伝える役割を果たします。
このとき、インサートカットは、コンティニュイティ編集によって確立された物語に対して情報を補足する役割を果たしています。
このように、コンティニュイティ編集とインサートカットは、両輪のような関係で、映画の編集において重要な役割を果たします。
カットアウェイとの違い
インサートカットとカットアウェイは、どちらも映画の編集において、物語の進行に直接関係のない映像を、他の映像の間に挿入する手法です。しかし、両者は、目的や効果が異なる点に注意が必要です。
インサートカットは、物語の進行に必要な情報を視聴者にわかりやすく伝えるために使用されます。例えば、主人公が何かを調べているシーンで、その調査結果をインサートカットで挿入することで、視聴者に調査結果を理解してもらうことができます。
一方、カットアウェイでは、物語の進行に直接関係のない映像が、視聴者の興味を引き付けたり、緊張感を高めたりするために使用されます。
例えば、主人公が何か危険な状況に直面しているシーンで、カットアウェイで爆発や銃声などの映像を挿入することで、視聴者の緊張感を高めることができます。
このように、インサートカットは、物語の情報を補足するために使用される手法であるのに対し、カットアウェイは、物語の進行を中断して、視聴者の注意を引くために使用される手法であると言えます。
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