映画『レミニセンス』、記憶潜入の原理とルールを徹底解説

2021年9月15日水曜日

SF サスペンス 映画

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映画『レミニセンス』
この記事では映画『レミニセンス』の記憶潜入のルールをわかりやすく解説します。映画のネタバレを含む可能性がありますので、未鑑賞の方はご注意下さい。

レミニセンス(記憶潜入)とは

映画『レミニセンス』は、ヒュー・ジャックマン演じる主人公が記憶を追体験しながら失踪した恋人を探すSFスリラーです。

映画『レミニセンス』のあらすじや登場人物・キャストについては以下の記事でネタバレも含めてくわしく解説しました。

この記事ではSFサスペンス映画『レミニセンス』のあらすじをネタバレ解説・考察します。さらに登場人物やキャスト、監督と製作を務めたリサ・ジョイとクリストファー・ノーランについても紹介しました。

日本のメディアで「記憶潜入」と言われているのは、映画のタイトルにもなっている「レミニセンス」のことです。

英語の「レミニセンス」は「思い出すこと、回想、思い出」という意味がありますが、映画のなかでは人間の記憶を生々しく再現する技術も指します。

「記憶潜入」というと、クリストファー・ノーラン監督のSFスリラー『インセプション』のように人の記憶のなかに入り込むことを連想するかもしれません。しかし、レミニセンスの仕組みはそれほど複雑なものではありません。

レミニセンス装置のなかで過去を回想している人の記憶が、プロジェクターや3Dホログラムで映し出されてデータとして記録できるため、他人も共有できるということです。

レミニセンス装置では対象者の記憶が正確に再現されるため、その記録は法廷で証拠として採用されるほど信頼できる、という設定になっています。

レミニセンスの起源

映画『レミニセンス』

レミニセンス(記憶潜入)は気候変動の影響で勃発した戦争時に開発された技術です。映画『レミニセンス』の主人公・ニック・バニスターは海軍に所属していましたが、戦争で国境パトロールに配属され捕虜尋問を担当するようになります。

このときニックはレミニセンスの技術を使って多数の捕虜から記憶を探り出すテクニックを習得したのです。しかし、戦争が終わると、厳しい現実から逃避するため人生で最も幸福な出来事を追体験することにお金を払う人たちが増えました。

これに目をつけたニックはレミニセンス装置を調達してマイアミの浸水エリアの銀行だった建物にバニスター・アンド・アソシエイツという事業を立ち上げます。

彼はクライアントが希望する記憶を確実に呼び出せるガイドとして、時間制で料金をとって稼いでいるのです。

レミニセンスの装置

映画『レミニセンス』

レミニセンスに使う装置は対象者が入るチューブのようなタンクと、対象者の記憶を映し出して記録するプロジェクターなどの機器から構成されます。

映画『レミニセンス』

記憶を探られる対象者は服を脱いで頭にセンサーのついた輪をかぶりタンクの中の水に半身つかって横たわります。

映画『レミニセンス』

タンクに入る前にクライアントは麻酔薬・チオペンタールを注射されるので、目をつぶってニックの心地よい声に耳を傾けると、客はすぐにうっとりとした状態に。

ここからニックは客に慎重な質問をすることで、目的の記憶にスムーズに誘導していく「舵取り」になります。長年のパートナーであるワッツの操作で脳に30ボルトの電流が流されると、3Dホログラムに客の記憶が映し出され、メモリーカードに記録されます。

この間、過去の記憶を思い出している客は、その出来事を実際に体験しているような錯覚に陥るのです。その臨場感は映像を遥かに超えるものなので、ニックの店でお金を出して何度も同じ体験をしたがる常連客がたくさんいます。

ちなみにこの「舵取り」というのは、ギリシア神話の三途の川の渡し守・カロンの引用。オルフェウスの物語とならんで、この映画でギリシア神話が効果的に活用されている例です。

オルフェウスの神話が映画『レミニセンス』で持つ意味については以下の記事で考察しました。

この記事ではSFサスペンス映画『レミニセンス』のあらすじをネタバレ解説・考察します。さらに登場人物やキャスト、監督と製作を務めたリサ・ジョイとクリストファー・ノーランについても紹介しました。

記憶潜入(レミニセンス)のルールを解説

ここからは日本のメディアで宣伝されている「記憶潜入のルール」を映画のなかの例をつかって解説します。

ルール1:潜入できる記憶は、対象者が五感で体感した世界すべて

映画『レミニセンス』

このルールの意味は、レミニセンス装置のなかの対象者には、その記憶が五感のすべてで再現される、ということです。

周囲の音や匂いや肌の感覚といったものまでレミニセンスの対象者には再現されます。観察している人や記録からはこういった情報は再現できないため、何度もレミニセンスで幸福な瞬間を体感したい、というひとが出てくるわけです。

忘れ物を探すのにも便利

本人が感覚で感じ取っていたにもかかわらず後から思い出せなくなっていることもレミニセンスは正確に再現します。

映画の冒頭で、ニックが恋に落ちるメイは「なくした鍵を探してほしい」といってニックの店にやって来ました。

「鍵を忘れた」という場合には、どこかに置いた感覚があってそれを思い出せなくなっているだけなので、レミニセンスで簡単に見つけられます。

【ネタバレ注意】「鍵をなくした」というのはメイがニックに近寄るための口実だったため、鍵は簡単に見つかりました。

ルール2:同じ記憶に何度も入ると、対象者は記憶に呑み込まれ、現実に戻れなくなる

映画『レミニセンス』

このルールは、ニックのセリフ「Memories are like perfume. Better in small doses. (記憶は香水のよう。少しだけ使うのがよい)」で簡潔に説明されます。

レミニセンスで同じ記憶を何度も体験していると、ある瞬間が終わりのないループで心に焼き付けられる(burned)危険性があるという意味です。

また、感覚を強烈にするためレミニセンス装置の電力を強化しすぎても同じ現象が生じます。

記憶が焼き付いた例

映画のなかでは記憶が焼き付いて現実に戻れなくなる人物が2人います。

ニックの常連客のひとり、マイアミの不動産王の未亡人・タマラ・シルヴァンは、夫に子どもが出来たことを知らせる人生最高の瞬間をニックの店で何度も追体験していました。

この記憶から抜け出せなくなった彼女は、自分の屋敷のなかに記憶とそっくり同じ世界を再現した部屋を作らせます。その部屋で彼女は昔と同じ服を身につけ、息子には夫の服を着せて夫との記憶を再現し、現実から逃避するのでした。

【ネタバレ注意】また、映画の終盤でニックはメイを自殺に追い詰めた元警官・ブースをレミニセンス装置で狂気に陥れています。

ニックはブースのトラウマ・半身大やけどを負った記憶を装置の電力を最大にすることで、彼の心に無限ループで再現されるよう焼き付けて復讐したのです。

ルール3:記憶に“事実と異なるもの”を植え付けると、対象者は脳に異常をきたす

レミニセンスにニックのような「舵取り」が必要なのは、対象者に間違った質問をすると脳にダメージを与える可能性があるからです。

映画のなかでギャングをレミニセンス装置で尋問する場面。検事のひとりが「セント・ジョーは麻薬ビジネスをマイアミに拡大するためにお前を送ったんだな」と聞いた途端、画面が真っ白くなってギャングは引きつけを起こします。

これは「ブランキング(消えていく、意識を失う)」という現象です。対象者がやっていないことをやったと断定するような誘導尋問を行うと、対象者の脳内にアクセスする記憶がないため電波障害(static)が生じます。

このとき尋問者が適切な質問をして記憶を正しい時間軸にもどさないと、対象者の脳に重大なダメージが生じる危険性があるのです。

レミニセンスは物語のタイム・ジャンプを可能にする

映画『レミニセンス』

記憶を生々しく再現して追体験できるレミニセンスの技術という設定は、映画でタイム・ジャンプの効果を出しています。

映画の序盤で、メイと幸福なひとときを過ごしていたニックは、ワッツの手で現実に引き戻されます。ここで観客は、それまでの場面がニックのレミニセンスで追体験した記憶であり、実際はメイが失踪してから何カ月も経っていたことを知らされるのです。

画面で現在起きていることは現在か、それとも記憶か、つねに観客の予想を裏切る演出が次々と繰り出されるのが映画『レミニセンス』のトリックです。

このため、映画全体がニックの追体験するレミニセンスである、という解釈も可能な謎めいた結末になっています。

このような映画『レミニセンス』の結末のネタバレ解説・考察は以下の記事でくわしく行いましたので、よろしければご覧になって下さい!

この記事ではSFサスペンス映画『レミニセンス』のあらすじをネタバレ解説・考察します。さらに登場人物やキャスト、監督と製作を務めたリサ・ジョイとクリストファー・ノーランについても紹介しました。

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