映画『トムとジェリー』ネタバレ解説と感想評価:田舎のネズミ、都会に行く

2021年3月16日火曜日

アニメーション コメディ

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映画『トムとジェリー』、クロエ・グレース・モレッツ(中央)©2020 Warner Bros. All Rights Reserved
この記事では映画『トムとジェリー』の作品情報、あらすじ、キャスト、ネタバレなどを徹底解説します。この記事は映画『トムとジェリー』の結末などのネタバレを含みます。未見の方はご注意ください!

映画『トムとジェリー』の作品情報

『トムとジェリー』は2021年に公開されたアメリカ製作の実写とコンピュータ・アニメーションを合成したコメディ映画。いつもケンカばかりしているネコのトムとネズミのジェリーが、ニューヨークの高級ホテルで大騒動を起こす物語です

映画『トムとジェリー』の概要

80年以上にわたって世界中の子どもから大人まで親しまれてきたドタバタコメディー・アニメ「トムとジェリー」。本作は、この人気アニメの長年のアーカイブ映像をもとにしたコンピュターアニメと実写を融合させた作品です。

実写の主役には、人気子役から大人の女優に成長したクロエ・グレース・モレッツが起用されました。

監督を務めたのは、映画「ファンタスティック・フォー」シリーズで知られるティム・ストーリー。本作もスピーディなアクションが見どころの1つになっています。

日本語吹き替え版では、楽曲『香水』で一躍有名になったシンガーソングライターの瑛人による書き下ろした主題歌も聴き逃せません。

  • 原題:Tom & Jerry
  • 監督:ティム・ストーリー
  • キャスト:クロエ・グレース・モレッツ、マイケル・ペーニャ、コリン・ジョスト、ロブ・ディレイニー
  • 公開年:2021年
  • 上映時間:1時間40分
  • 製作国:アメリカ

映画『トムとジェリー』予告編

映画『トムとジェリー』のあらすじ【ネタバレなし】

ネズミのジェリーは、田舎からバックパックを背負って憧れのニューヨーク・シティにやってきました。一方、ネコのトムはストリート・ミュージシャンをしながら音楽家として有名になる日を夢見ています。

ある日、マンハッタンのセントラルパークで偶然出会ったトムとジェリー。ネコとネズミのDNAに組み込まれている追いかけっこが早速始まりました。

この騒動に巻き込まれたのがペンシルベニアの田舎からニューヨークに来て働くフリーター・ケイラ(クロエ・グレース・モレッツ)。トムと衝突したケイラは、配達する途中の衣類を台無しにされてしまいます。

このドサクサに紛れてジェリーは、セントラルパークに隣接する高級ホテル・ローヤル・ゲートに潜り込むことに成功。一方、配達の仕事をクビになったケイラも、他人の履歴書を使ってこのホテルで行われる「世界が注目するウェディングパーティー」の臨時職員に採用されます。

そのウェディングパーティーとは、インフルエンサーとして有名なベンとプリータのカップルのインド風結婚披露宴。プリータの父親に好印象を与えたいベンは、彼女の気持ちはあまり気にせず、披露宴の計画をどんどん派手なものにエスカレートさせていきます。

なんとベンは花嫁・花婿の入場に本物の象を使うことまで勝手に決めてしまいますが、この決定が後で大混乱の原因となるのです。

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3月19日から公開される映画『トムとジェリー』は、現代のニューヨーク・セントラルパークに隣接する豪華ホテルが舞台で、様々なアクセントの英語を聞くことができる。

一方、このイベントのアシスタントになったケイラはホテルにネズミが出てはまずいので、ネコのトムにネズミのジェリーを捕まえさせようとします。しかしジェリーが簡単にトムに捕まるわけはなく、最後はブルドッグ・スパイクまで巻き込んだドタバタでホテルのロビーを滅茶苦茶にされてしまいます。

トムとジェリーが可哀想なので追い出せないケイラは、披露宴の間だけ大人しくしていたら、彼らをホテルに住まわせてやると約束します。しかし今回の騒動の責任を問われてホテルのイベント・マネージャの仕事を解任されたテレンスが、トムとジェリーを利用してケイラの正体を暴きホテルに復讐しようと画策するのでした。

はたして「世界が注目するウェディングパーティー」は無事に開催されるのでしょうか?

映画『トムとジェリー』のスタッフ

監督:ティム・ストーリー

本作の監督を務めたティム・ストーリーは、1970年アメリカ・カリフォルニ州生まれのアフリカ系アメリカ人の映画監督、プロデューサーです。

ロサンゼルスに生まれたストーリーは、同地のウエストチェスター高校でジャズピアニストのエリック・リードなどとともに学びました。

高校時代にはミュージシャンとしてのキャリアを目指していたストーリー。彼は一時Ice-TのRhyme Syndicateに所属しT.D.F.というグループに加わって1988年のコンピレーション・アルバムRhyme Syndicate Comin‘ Throughの楽曲に出演しています。

そんなストーリーは、本作では鳩の声で出演しています。さらにピアニストしてのトムの演出や場面に絶妙にマッチしたサウンドトラックなどにも、ストーリーのミュージシャンとしての才能を感じることができるでしょう。

1990年代終わりから映画監督として活躍するようになったストーリー。リュック・ベッソン製作・脚本の『タクシー』のアメリカ版リメークや実写版「ファンタスティック・フォー」シリーズなどアクション映画が有名です。

一方、『魔法の恋愛書』(2012年)といったロマンティック・コメディも手がけており、本作でもアクションとコメディのバランスが見事に取れています。

日本語吹き替え版主題歌:瑛人

日本語吹き替え版の主題歌は、人気急上昇中のシンガーソングライターの瑛人が書き下ろした『ピース オブケーク』。トムとジェリーの関係を表す「大嫌いだけど、好き」という言葉を思い浮かべながら、瑛人はこの曲を作ったのだとか。

瑛人は、2019年に楽曲『香水』をリリースしてシンガーソングライターとしてブレイクしました。2020年末のNHK紅白歌合戦にも出場を果たして、これからの活躍が大いに期待されるミュージシャンです。

映画『トムとジェリー』のキャスト

ここからは映画『トムとジェリー』のメイン・キャストをご紹介します。見出しは「役の名前:俳優の名前」の順番です。

ケイラ:クロエ・グレース・モレッツ

ケイラは配達の仕事をやめたばかりの若いフリーター女性。頭の回転が速く、ローヤル・ゲート・ホテルに面接に来ていた別人の履歴書を使って臨時アシスタントに採用されます。

ケイラ役を務めるクロエ・グレース・モレッツは、1997年生まれアメリカ出身の女優です。

5歳の頃からモデルや広告出演など芸能活動を始めたモレッツは、2005年に映画『悪魔の棲む家』でブレイク、子役として注目されはじめました。特に2010年に公開された映画『キック・アス』のスーパーヒロイン・ヒット・ガール役で強く印象に残る演技を見せています。

その後は、名作ホラー映画のリメイクである『キャリー』(2013年)や『サスペリア』(2018年)をはじめとるホラーやサスペンス映画を中心に活躍。久々のコメディとなる本作では、軽快な演技の才能も発揮しています。

日本語版の吹き替えは、テレビアニメ『五等分の花嫁』で中野五月役を務めた声優の水瀬いのりが務めました。

テレンス:マイケル・ペーニャ

テレンスはローヤル・ゲート・ホテルのイベント・マネージャでケイラの直接の上司になります。

少し意地悪そうで苦労人のテレンスには、性格俳優・マイケル・ペーニャが扮しました。

1976年生まれのペーニャは、メキシコ移民を両親に持つアメリカ人俳優・ミュージシャンです。

1994年から映画に出演しているペーニャは、2004年に公開されたポール・ハギス製作・脚本の映画『クラッシュ』と『ミリオンダラー・ベイビー』の演技でブレイクしました。その後はあらゆるジャンルの映画で個性的な脇役として活躍しています。

ミュージシャンとしては2005年から2007年までNico Vegaというロックバンドを組んでおり、楽曲がビルボードのチャート入りしたこともあるとか。

2010年代後半の話題作としては、MCUの実写映画「アントマン」シリーズのルイス役や、Netflixのドラマ『ナルコス:メキシコ編』の主人公・キキ・カマレナ役をあげることができます。

テレンス役の声優は、アニメ『ドラえもん』シリーズでジャイアン役を務めている声優・木村昴が担当しました。

ドゥブロー:ロブ・ディレイニー

ドゥブローはローヤル・ゲート・ホテルのオーナーにして総支配人。機転のきくケイラを気に入って雇います。

人の良さそうなドゥブロー役を演じたロブ・ディレイニーは、1977年生まれアメリカ出身のコメディアンです。ツイッターから有名になった新しいタイプのコメディアンであるドゥブローは、2015年から2019年まで『Catastrophe(原題)』というTVショーの主演を務めていました。

映画俳優としては『デッドプール2』(2018年)のピーター役や『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)のエージェント・ローブ役で知られています。

ドゥブローの吹き替えは、ナレーターとしても活躍する声優の大塚芳忠が務めました。

ベン:コリン・ジョスト

ベンは「世界が注目するウェディングパーティー」の主催者である新郎。トムの天敵であるブルドッグ犬・スパイクの飼い主でもあります。

極端に派手好き、新しもの好きな性格のインフルエンサー・ベン役を務めるのは、1982年生まれアメリカ出身のコメディアン・コリン・ジョストです。

ジョストはアメリカの人気コメディ番組『Saturday Night Live(原題)』や『Weekend Update(原題)』のレギュラーを長年務めています。映画の仕事は2016年公開のロマンティック・コメディ『ワタシが私を見つけるまで』以来約5年振りになります

ベンの日本語吹き替え版の声は、アニメ『鬼滅の刃』シリーズで煉獄杏寿郎役を務めた声優の日野聡が担当しました。

プリータ:パラビ・シャーダ

プリータはベンと結婚する予定のインド人の花嫁です。

プリータ役に扮したのは、1990年オーストラリア生まれのインド系の女優。パラビ・シャーダです。メルボルン大学を優秀な成績で卒業した彼女は、2010年から活動拠点をムンバイに移して以来、多数のボリウッド映画に出演しています。

映画『トムとジェリー』のネタバレ解説

ここからは、映画『トムとジェリー』の結末などのネタバレを含みます。未見の方はご注意ください!

花嫁の婚約指輪をシャンデリアに使っていたジェリー

ホテルに住み着いたジェリーは、いろいろなものをホテルで盗んできては自分の部屋の飾りつけに使っていました。

スマートフォンを液晶テレビに、コンパクトを壁掛けの鏡に、シャンペンの蓋を椅子にと、このあたりのアニメの描写は細かいです。

極めつけは、シャンデリアにしていた花嫁の特大婚約指輪! 指輪をなくして困った花嫁のプリータは、ケイラに密かに探してくれないかと頼みます。

ホテルのスタッフの会話を立ち聞きしたジェリーが指輪を返してくれたので、ケイラはプリータの信頼を獲得。このこともあってケイラはホテルの総支配人から評価され、ロビーでの騒動の後にもクビにされず、イベント・マネージャに昇格したのでした。

象が大暴れして披露宴はメチャクチャに

披露宴の朝、ケイラはホテルのリムジンでトムとジェリーをニューヨーク観光に送り出しました。

仲良くニューヨークの名所を見物していたトムとジェリーですが、野球場で外野フライのボールをキャッチしてしまったことで保健所に捕まってしまいます。

これをテレビで見ていたテレンスは、保健所からトムとジェリーを貰い受けて披露宴会場に忍び込ませます。2人の対立を煽って会場で追いかけっこをさせて披露宴を台無しにしようという計画です。

この計画にまんまとひっかかったトムとジェリー。その上、ウェディングケーキの前に立つジェリーを見つけて怒り狂ったシェフが、クリケットバットで襲いかかりケーキをメチャクチャにしてしまいます。

バットで打ち飛ばされたジェリーは、花嫁・花婿を乗せて会場に入ってきた象の頭にぶち当たり、ネズミを見て驚いた2頭の象はパニックに。やがて会場はトラやクジャクといったその他の披露宴の飾りに使われていた本物の動物たちを巻き込んだ大混乱に陥ることに。

やがて象たちは、宴会場のドアを蹴破り、ロビーや正面玄関を抜けて表通りへと逃げ出していきました。失望した花嫁・プリータは花婿・ベンに婚約指輪を返して去っていきます。

セントラルパークを使った披露宴でハッピーエンド

台無しになったパーティー会場で、ケイラはホテルの人たちに他人の履歴書を使って仕事に応募したことを謝って、ホテルを去っていきます。用済みになったトムもホテルから追い出されて再び野良猫になってしまいました。

翌朝トムのもとを訪れたジェリーはトムと仲直り、ケイラを説得してベンとプリータの披露宴をやり直す計画を立てます。

トムとジェリーと一緒にホテルに戻ったケイラは総支配人と花婿・ベンに、隣接するセントラルパークを使って屋外で改めて披露宴を行うことを提案。一方、空港へ向かうリムジンに乗ったプリータをトムとジェリーがスケートボードで追跡、披露宴会場に誘導してきます。

ケイラの説得もあってベンと仲直りをしたプリータ。象をはじめとする動物たちも加わって披露宴は無事に行われ、ケイラもホテルに就職するチャンスを得たのでした。

エンドクレジットも見逃せない!

エンドクレジットは本作に登場する動物たちのキャラクターアートをふんだんに使って楽しく仕上げられています。

さらにポストクレジットシーンは、ホテルの総支配人と花婿・ベンのダイアログ。今回の大騒動の原因を作ったともいえるベンは、ホテルから披露宴2回分の料金を請求されることになります。

「冗談でしょ」というベンに、ホテルの総支配人は「テレンスと計算してみましたけれど、あなたにとってはいい結果にはなりませんでしたよ」とニンマリするのでした。

映画『トムとジェリー』の感想評価

映画『トムとジェリー』の最大の見どころは、コンピュータ・アニメと実写の見事な融合にあります。さらに実写の人間のシーンでは、クロエ・グレース・モレッツのコメディ女優としての演技の才能も見逃せません。

コンピュータ・アニメと実写の見事な融合

本作は、最初から最後まで人間以外のすべての生物がかわいいコンピュータ・アニメになっています。

特にトムとジェリーに関しては、80年以上親しまれてきた基本的なデザインをあまり変えることなく実写に自然に融合させた点は称賛に値するでしょう。

製作にあたったのはワーナー・アニメーション・グループ。長年のアーカイブ映像をもとに、漫画映画の特徴であるキャラクターのまわりの黒フチをとりのぞき、代わりに微妙な影を付け加えることで自然な立体感をもたせています。

前述した、ホテルのジェリーの部屋の小物などディテールに凝った描写も秀逸です。その細かさは冒頭で地下鉄の駅からトムが出てくるシーンの背景にも現れています。

この場面、注意して見ると犬のドルーピーがホアキン・フェニックスの『ジョーカー』(2019年)に扮したポスターがチラッと見えるのです! 映画ファンの心をくすぐる、ちょっと気の利いた遊び心ですね。

コメディ女優としてのクロエ・グレース・モレッツ

本作のさらなる見どころは、主演のクロエ・グレース・モレッツのコメディ女優としての演技です。

マイケル・ペーニャをはじめとするベテラン性格俳優やコメディアンに支えられ、ドタバタ・アニメに合わせた、やや大げさにコミカルな役を演じきっています。

これまでホラーやサスペンスなどシリアスな役が多かったモレッツの、新たな側面を見ることができる作品とも言えるでしょう。

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