- 夏の観光シーズンを前に、ヨーロッパでも新型コロナウィルスによる外出制限の緩和に向かう動きが見られるようになりました。
- ドイツのマース外務大臣は、この夏の国外旅行にはヨーロッパ共通の基準が必要との見解を示しました。
- その他の閣僚もドイツ国内旅行を推奨しています。
- ドイツ旅行協会(DRV)は旅行業界で倒産連鎖が起きると警告しています。
夏の観光シーズンを前に、ヨーロッパでも新型コロナウィルスによる外出制限の緩和に向かう動きが見られるようになりました。
この記事ではこの夏の観光に関するドイツ政府与党関係者の見解をまとめています。
マース外務大臣、ヨーロッパの国外旅行に消極的な見方
ドイツの隣国オーストリアのクルツ連邦首相は先日、チェコやドイツからの観光客を段階的に受け入れ始めることを示唆しました。このような動きに対してドイツのハイコ・マース外務大臣は26日「ビルト日曜版」に、「ヨーロッパで競争のように観光旅行の受け入れを再開することは、容認し難い危険をはらんでいる」と語り、慎重な姿勢を示しました。
マース外相は、オーストリアのスキー・リゾート・イシュグルで多数のドイツ人が感染した事実に言及。
「人気のリゾート地での感染クラスターが、旅行者の帰国先でどのような事態を引き起こすかは経験済みである」と批判。再び自由に旅行できるようになるためには、ヨーロッパ共通の基準が必要であると強調しました。
ドイツ政府観光担当者、国外旅行は困難との見方
ドイツ政府観光担当のトーマス・バライス氏は、今年の夏はドイツ国内の旅行は可能であるが、大規模な国外旅行は不可能であるとの見方を示しました。一方同氏は、現在の世界的渡航危険情報は慎重に緩和されるべきであるとの意見も述べています。
ドイツ国内の旅行に関しては、明確な安全基準が必要とし、「安全な間隔、定期的な消毒、職員の検査」を例にあげました。
連邦経済省政務次官を兼任するバライス氏は、レストラン、レジャーパーク、バス旅行についても段階的に制限を緩和する希望を示しています。
現在ドイツではレストランはテイクアウトのみ可能ですが、レジャーパークは休業、バス旅行も不可能です。
農業大臣、地方での休暇を推奨
ユリア・クレックナー農業大臣も、地方での国内休暇を推奨しています。例としては田舎の小規模な休暇の家や、宿泊施設を備えた農場での滞在をあげました。一方、朝食ビュッフェに数百人が押し寄せるような大ホテルでの休暇は、現段階では非常に困難であるとの見方を示しました。
ドイツ旅行協会、倒産連鎖を危惧
この夏の暗い見通しに業界団体のドイツ旅行協会(DRV)は旅行業界で倒産連鎖が起きると警告しています。26日の「ビルト日曜版」の報道によれば、旅行業者の約6割は支払不能の危機に瀕しており、約2割は従業員の解雇を余儀なくされたそうです。さらに国の補助を申請した業者は約8割にのぼります。
ドイツの旅行業界は中小企業が多く、旅行代理店は1万1,000店、旅行業者は2,300店を数えます。ノルベルト・フィービッヒ・ドイツ旅行協会会長は、セーフティネット保証のような政府の支援策がなければ旅行業界の様相は一変する、と警鐘を鳴らしました。
新型コロナウィルスによって、旅行業界は約48億ユーロ(約5,590億円)の売上高減少を被っています。
参考:Sommertourismus in der Corona-Krise: Maas warnt vor europäischem Wettlauf bei Reiselockerungen