- イタリアの放漫財政が欧州全体の問題に発展することは、1990年代にドイツ財政当局者が感じた不安でした。
- コロナウィルスが猛威をふるうイタリアで、その不安が今や現実のものとなりつつあります。
イタリアの放漫財政が欧州全体の問題に発展する可能性は、1990年代のユーロ導入期にドイツ財政当局者が何度も感じた不安でした。
コロナウィルスが猛威をふるうイタリアで、その不安が今や現実のものとなりつつあります。
イタリアのGDP、今年6%減 経済団体調査
コロナウィルスによる多数の死者とロックダウン(都市封鎖)による経済的影響に対処するためイタリア政府は大規模財政出動を迫られています。このためすでに拡大していた公的債務残高のGDP比は150%を越える勢いです。さらに経済団体Confindustriaの報告書によれば、イタリアのGDPは今年6%の減少が予想されます。家計消費は6.8%減、総事業投資は10.6%減の見込みです。コロナ危機が5月に収束しなければ、この数字はさらに悪化する可能性があります。
またブルームバーグ・エコノミクスは第1四半期のGDPの減少を6%と予測しました。一方モルガン・スタンレーのレポートは第1四半期のGDPは年間ベース19%減、第2四半期は33%減と見ています。
経済支援に大規模財政出動
このためイタリア政府は、コロナ対策の経済支援に500億ユーロ(約5兆9310億円)にのぼる財政出動を展開しました。この新たな債務が現在GDP比135%の公的債務残高に加わることになり、財政赤字は金融危機以来最悪の5%を超える公算が高いです。イタリア出身のドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁はフィナンシャル・タイムズの論説で、公的債務が今後も高水準で推移すると予測しています。
欧州諸国、拡大信用枠や資産購入上限撤廃で対処
この事態に対して欧州諸国は、欧州安定メカニズム(ESM)の拡大信用枠による融資での支援を示唆しました。一方欧州中央銀行(ECB)も7500億ユーロ(約88兆9665億円)の緊急プログラムでは、資産購入上限を撤廃する意向を示しています。この結果3月に一時3%近くまで上昇した国債10年物利回りは1.5%以下に戻り、イタリアはじめ各国の借り入れコストは低下しました。
くすぶり続けるユーロ圏共同債発行
国際通貨基金(IMF)のポール・トムセン氏は伊財政に余裕はあるが、「危機収束後は段階的な赤字縮小の必要がある」と語っています。一方、モンティ元伊首相は、ドイツやオランダのような豊かな国がユーロ圏共同債の発行で貧しい国を支援すべきとの考えを示しました。
ユーロ圏から切り離せないイタリア
共通通貨ユーロ導入の決定以来、イタリアの運命はユーロ圏と密接にからみあうことになったようです。ユーロ導入の経緯をまとめた『ザ・ユーロ』の著者・デヴィッド・マーシュ氏は、イタリア参加の事情を次のように要約しています。
「イタリアを参加させないことは、計算としては妥当であったが、政治的には不可能であった」
参考:Nightmare Haunting Euro Founders May Be a Reality With Italy