今年の9月1日に、5年に一度の州議会選挙が予定される、ドイツ北東部ブランデンブルク州の最新世論調査で、右派ポピュリスト政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が同率首位に躍進しています。今回は極右政党の躍進について分析してみます。
この記事ではブランデンブルク州の地元紙「マルク一般新聞Märkische Allgemeine」の委託で世論調査会社フォルサが2018年末に行った調査を取り上げます。
ドイツのための選択肢AfDと緑の党が躍進
2019年1月2日付マルク一般新聞(電子版)に掲載された調査結果によりますと、「ドイツのための選択肢(AfD)」は州政府与党のドイツ社会民主党(SPD)と同率の20%の有権者の支持を獲得しました。
2018年秋の調査でもAfDは同率首位だった。
昨年秋に地元公共放送RBBの番組「ブランデンブルク・アクトゥエル」とアンテナ・ブランデンブルクの委託で行われたインフラテスト・ディマプの世論調査でも、「ドイツための選択肢(AfD)」はドイツ社会民主党(SPD)と同率の23%の有権者の支持を獲得しています。
AfDが首位になったのは社民党の支持率減少が原因
今回の世論調査ではドイツ社会民主党(SPD)の退潮傾向が明らかになりました。2014年に行われた州議会選挙でドイツ社会民主党(SPD)は31.9%の得票率で第一党でした。この結果と比較すると社会民主党(SPD)は10%ポイント前後の支持を失ったことになります。
これに対して右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、前回の州議会選挙の得票率12.2%から10%ポイント前後、支持を増やしていることになります。
キリスト教民主同盟も微減
保守政党キリスト教民主同盟(CDU)は今回の世論調査では19%でした。現在ブランデンブルク州で社会民主党と連立政権を組んでいる左翼党(Die Linkspartei)は17%でした。
前回の州議会選挙の結果と比較しますと、キリスト教民主同盟(CDU)が4%ポイント、左翼党が1.6%ポイント減少しています。
キリスト教民主同盟が微減、左翼党は誤差の範囲内で支持に変化はなし、といったところでしょうか。
ブランデンブルク州での連立維持は困難に
この結果ですと現在州政府の政権与党である社会民主党(SPD)と左翼党を合わせても過半数に達しないことになります。
このままでは連立政権の維持は困難で、新たな連立パートナーを探す必要が出てきそうです。
緑の党は躍進
昨年のバイエルン州やヘッセン州の議会選挙で躍進が注目された緑の党は、ブランデンブルク州でも支持を大幅に増やしています。
今回の世論調査では、12%の支持を獲得し、前回の州議会選挙の6.2%と比較するとほぼ倍の結果となりました。
ドイツのための選択肢AfDは「極右政党」扱い
今回の世論調査では、「ドイツのための選択肢(AfD)」の位置づけも質問に含められていました。
回答者の過半数74%が「ドイツのための選択肢(AfD)」を「極右政党」に位置づけていることが明らかになりました。
依然として過半数の有権者は「ドイツのための選択肢(AfD)」を「極右政党」と見なしているということは、AfDが従来の抵抗政党のイメージから脱却できないでいることを意味します。
この状態が続く限りは、他の政党とも連立を組むことができず州政府レベルでさえも政権に参加することは困難でしょう。
歯止めのかからぬ社会民主党SPD離れ
ブランデンブルク州はドイツ北東部に位置し、首都ベルリンが州内にあります。
歴史的には旧東ドイツに所属していました。1990年の東西統一後、ドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)に含められたいわゆる「新連邦州」です。
政治的には統一以来、ドイツ社会民主党(SPD)が一貫して州議会第1党の地位にありました。
それにもかかわらず、右派ポピュリスト政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が世論調査で同率首位に躍進してきたということは、昨年の選挙でも明らかになった有権者の社会民主党(SPD)離れが持続していることを表しています。
緑の党の躍進という傾向も昨年から変わりません。
メルケル首相のキリスト教民主同盟は、支持の減少を一定範囲内に収めていますから、今後の政局を占うポイントは、社会民主党SPDがどこまで支持を回復できるかというところでしょう。
2019年ドイツの主要な選挙
今年のドイツの主要な選挙はブランデンブルク州州議会選挙の他には、5月下旬に行われる欧州議会選挙とブレーメン州(特別市)議会選挙、9月1日のザクセン州州議会選挙、10月27日のチューリンゲン州州議会選挙が予定されています。